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使用感の無い極薄モグラ記

再開
229 hrk 2006-09-05 05:09 permalink
ソクーロフ「太陽」

「見た後、ちょっとだけヒロヒトになれます」(サークルの後輩の発言から)

配給が決まる前にプレス資料を見た人から、「日本では配給できませんね」と聞いていたんですが、それ程でもなかった。戦争が終わる数日の間に、天皇が現人神である事をやめる過程を描いた作品。「敗戦国の元首でしかも現人神」という特殊な立場でありながらも、賢明であろうとし、人間くさい天皇像を描いていて、今一般に考えられている裕仁天皇のイメージとそれ程の乖離はない感じだと思います。殊更に悪く、あるいは良く描こうとしている感じでもなく。

意外に笑いを誘うシーンがけっこうあって、中でも陛下を進駐軍の兵士が"チャーリー"(チャップリン)呼ばわりする所で比較的場内が「くすくす」していたりして、まあちょっと不敬と言われかねない状況なわけですが、「20世紀の日本の天皇をアメリカの兵隊がからかっている、という状況をソ連の映画監督が撮影して、それを見て21世紀の日本人が笑っている」という大変複雑な状態が生じていて、その複雑さを体験できているという事にちょっと感動しました。「太陽」は日本人にとっては「見る」作品ではなくて、「体験する」映画だと思います。行った事無いけど、タイタニック号の揺れに会わせて揺れる映画館とかあるんでしょ?煙が出たりとか、ああいった感じの体験型アトラクション的な何かが感じられました。映画館に仕掛けがあるんじゃなくて、自分の脳内や他の観客に仕掛けがあるんだけど。

"チャーリー"以外の笑いを誘うシーンは、イッセー尾形のスキルによる所が大きかったと思います。
あと、桃井かおりは断然桃井かおりでした。
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